2009年1月1日
(1)

 ドクン
 その時、自分の中で何かが揺れ動いた。ほんの一瞬ではあるが、確かに秋生の身体の中で何かが揺らいだ。

 その違和感は突然、生まれ、そして、消えた。


 「どうした、秋生」
今、天使としての資格とも言える、聖獣を授与する儀式の真っ最中に、我を失ったように茫然と立ち竦む秋生に天帝は、静かに声をかけた。

 「えっ、ああっ、何でもございません。余りの名誉に緊張してしまって・・・・・・」
慌てて自分を誤魔化しながら、秋生は自分が感じた違和感が今はもうなく、ただの気のせいに違いないと自分に言い聞かせながら、天帝への失礼を詫びて、深々と頭を下げた。

 天使となるべく修行に励んだ日々。それは決して楽なものではなかったが、天帝に使える名誉を思えば、どんな辛い試練にも耐えてこられた。

 そして、ついに夢がかない、最終試練を乗り越えて、四聖獣を授けられる名誉を得たのである。その大事な儀式の最中にぼんやりとしてしまった自分を秋生は恥じた。

 (もう、ぼんやりしちゃって、恥ずかしい)
周りの天使や天女達がクスクスと笑っているのを感じて、秋生は自己嫌悪した。

 普段からぼんやりしていると言われる事が多く、自分ではそんなつもりはなくて、それなりにいろいろと考えているつもりなのだが、どうも周りからはボーッとのんびりしているように見えるらしい。

 「これからも修行に励み、我に仕えて欲しい」
天帝のありがたい言葉に、感激に心を震わせながら秋生は再び深々と礼をした。

 「ありがたきお言葉。全身全霊を持ちまして、天帝様にお使えしたいと存じ上げまする」

 天帝から授与された、四聖獣を召還出来るという証である黄玉を手の甲にしっかりと握り締めながら、秋生は嘘偽りのない誓いを口にした。

 「うむ、期待しておるぞ」
「はい」
秋生はその瞳を輝かせて元気に応えたが、それが天女達にはとても初々しく可愛らしいものに感じられ微笑んだのだが、当の秋生はまた笑われてしまったと勘違いして、身を小さく縮めてしまった。

 天帝もまたそんな秋生を好ましく思い微笑んだが、すぐに、これから秋生の身に訪れるだろう試練を思い、秋生がそれらに負ける事無く、戦い抜いて、天界に幸せをもたらさん事をそっと心で祈るのであった。

 つづく

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